パワー関連 修士論文

18|試合前にジャンプエクササイズを取り入れたウォーミングアップを行うことでパフォーマンスが向上する!?

皆さん、あけましておめでとうございます🐅

このブログを始めて早4か月です。

2022年もブログとTwitterを宜しくお願いします🙇‍♂️

 

今年最初の記事は僕の専門分野でもある活動後増強(以下、PAP)を活用したウォーミングアップについて話していきたいと思います。

「PAPってなに??」

という方は以前僕が書いた記事をご覧ください👇

 

PAPについてこの記事でも改めて説明しておくと、PAPとは

「電気的に誘発された単収縮トルクが、事前に行われる随意(自分の意志で行う)活動を行った後に一時的に増加する現象」

のことを言います¹

 

また、上の図で書かれている通り、事前に行われる随意活動は一般的に『コンディショニング活動』と呼ばれています。

 

そして重要なこととして、このPAPが生じているタイミングでジャンプやスプリントを行うことでそのパフォーマンスが一時的に向上するといわれています

 

そのため、もしPAPを試合前のウォーミングアップで上手く発動することができると、

『試合の始めから最高のパフォーマンスを発揮することができる』

かもしれません。

 

今回はこのようなPAPを活用した例の中でも、コンディショニング活動としてジャンプエクササイズを用いた活用例を紹介しようと思います(👇こんな感じ)。

 

 

1.ドロップジャンプを用いた例

まず初めに、下の動画のようなドロップジャンプをコンディショニング活動として用いた論文をいくつか紹介しようと思います。

(👇ドロップジャンプ)

 

Chen et al. (2013)はドロップジャンプを5回1セットあるいは2セット実施した後に反動付きの垂直跳びの跳躍高が向上するかを検証しました²。

その結果、ドロップジャンプを1セット(計5回)と2セット(計10回)実施した両プロトコルとも、
コンディショニング活動を終了させた2分後に垂直跳びの跳躍高が高まることを明らかにしました。

 

 

また、Baena-Raya et al. (2020)は、5回のドロップジャンプを1セットあるいは3セット実施した4~12分後に垂直跳びの跳躍高が向上することを報告しました³。

 

これらの報告を踏まえると、事前に行われるドロップジャンプはジャンプパフォーマンスを一時的に高めるためのウォーミングアップとして有効である可能性があります。

ちなみに、

ドロップジャンプは理論的に考えても高いPAPを発動するのに好ましいコンディショニング活動であると考えられています。

以前の記事でも書いた通り、PAPは遅筋線維よりも速筋線維で高く引き起こされるため⁴、事前のコンディショニング活動では多くの速筋線維を動員することが重要であると考えられています。

そして、ジャンプエクササイズの中でも高強度エクササイズに分類されるドロップジャンプは”選択的に速筋線維が動員される種目”であるといわれています。

そのため、ドロップジャンプはエクササイズ中に多くの速筋線維を動員し、結果として高いPAPを誘発する可能性があります。

 

また、ドロップジャンプを実施する回数について

「高いPAPを発動させるためにドロップジャンプをたくさんやろう!!」

と考えてたくさん行ってもあまり効果的ではないといわれています。

というのも、ドロップジャンプをたくさんしてしまうとPAPと同時に大きな疲労も発生するため、発動されたPAPが疲労により打ち消される可能性が高くなってしまいます。

具体的には、5回×3セット以上ではそれ以上のパフォーマンスの増強は起きにくいといわれており³、今現在では5回を1~2セット程度のボリュームが好ましいと考えられています2,3

 

2.反動付きの垂直跳びを実施した例

次に、反動付きの垂直跳びをコンディショニング活動に用いた論文を紹介しようと思います。

(👇反動付きの垂直跳び)

 

Zimmermann et al. (2021)は、エリートレベルのスプリンターに対して5回3セットの垂直跳びが引き続く30mスプリントパフォーマンスにもたらす効果を検討しました⁵。

その結果彼らは、垂直跳びを実施した2分後と4分後に30mスプリントのタイムが速くなることを明らかにしました(下の図A)。

 

 

この結果から、事前に行われる垂直跳びが引き続いて行われるスプリントを速めるためのウォーミングアップとして有効である可能性が示唆されました。

また彼らは、スプリントのタイムが向上した時間帯にPAPも同時に存在することを明らかにし(上の図B)、PAPがスプリントタイムの向上に貢献した可能性が高いと述べています。

 

反動をつけた垂直跳びはドロップジャンプと違って、その場に台や段差などの環境がなくても実施できるので、ドロップジャンプよりも実用しやすいコンディショニング活動ですね🤔

 

3.10回のリバウンドジャンプを実施した例

また、コンディショニング活動としてその場でリバウンドジャンプを10回実施した後に引き続くジャンプパフォーマンスが向上することもいくつかの先行研究で報告されています6,7

※リバウンドジャンプ👉出来るだけ膝を曲げずに足関節を使って行うジャンプエクササイズ

 

例えば、Bergmann et al. (2013)は、10回のリバウンドジャンプが引き続くドロップジャンプのジャンプパフォーマンスにもたらす効果を検証し⁶,

事前にリバウンドジャンプをコンディショニング活動として実施しておくと、何も実施しなかったとき(コントロール条件)よりも引き続いて行われるドロップジャンプの跳躍高が高くなることを明らかにしました。

また彼らもZimmermann et al. (2021)⁵と同様に、コンディショニング活動によって発動されるPAPを観察しています。
その結果彼らは、10回のリバウンドジャンプによって発動されたPAPの程度ドロップジャンプの跳躍高の増加の程度との間に有意な相関関係が存在することを明らかにしました。

これらの結果を踏まえて、彼らは10回のリバウンドジャンプによって発動されたPAPがドロップジャンプの跳躍高の向上に関与していると述べていました。

反動付きの垂直跳びと同様にリバウンドジャンプもその場ですぐに実践することが可能なので、

例えば、レースの直前にその場でリバウンドジャンプを数回行うことで、何もしないときよりももしかするとタイムが速くなるかもしれません。

 

まとめ

今回はジャンプエクササイズを用いてPAPを活用した論文を紹介しました。

実は多くのPAPについて調べられている研究の多くは、高強度のレジスタンスエクササイズをコンディショニング活動として用いているものが多いんですよね。

ただ、

「PAPの恩恵を実際の試合前のウォーミングアップで得たい!」

と思う人にとっては、設備などの問題から高強度のレジスタンスエクササイズを試合の前に行うのはなかなか難しいですよね。。。

その点、ジャンプエクササイズは道具などを準備しなくてもその場で実施することができるので、試合の直前でも容易に行うことができるかと思います。

なので、皆さんも重要な試合前のウォーミングアップで上で話したようなジャンプエクササイズを実施してみてください!
そうすることで、試合の最初から最高のパフォーマンスを発揮することが出来るかもしれません。

 

🚨注意点🚨

・PAPの程度は個人差が大きいため、効果を感じることが出来ない人もいます。

 

今回の記事はここまでになります!

 

ではまた!!

 

参考文献

  1. Sale DG. (2002). Postactivation potentiation role in human performance. Exerc Sport Sci Rev, 30(3), 138-143.
  2. Chen ZR et al. (2013). The acute effect of drop jump protocols with different volumes and recovery time on countermovement jump performance. J Strength Cond Res. 27(1), 154-158.
  3. Baena-Raya A et al. (2020). Effects of two drop-jump protocols with different volumes on vertical jump performance and its association with the force-velocity profile. Eur J Appl Physiol. 120(2),317
  4. Hamada et al. (2000). Postactivation potentiation, fiber type, and twitch contraction time in human knee extensor muscle. Med Sci Sports Exerc, 88, 2131-2137.
  5. Zimmermann et al. (2021). Continuous Jumps Enhance Twitch Peak Torque and Sprint Performance in Highly Trained Sprint Athletes. Int J Sports Physiol Perform, 16, 565-572.
  6. Bergmann J et al. (2013). Repetitive Hops Induce Postactivation Potentiation in Triceps Surae as well as an Increase in the Jump Height of Subsequent Maximal Drop Jumps. PLos One, 8(10), 1-10.
  7. Kümmel J et al. (2018). Conditioning hops increase triceps surae muscle force and Achilles tendon strain energy in the stretch-shortening cycle. Scand J Med Sci Sports. 28(1), 126-137.

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追伸

今僕は28~5日まで北海道に帰省しています!

皆さんは年末年始どのような生活を送っていますか?

僕は友達とボードに行ったりしてますが、家にいるときは今月末に迫った修士論文発表会の準備をしています汗

大阪に帰ったら仕上げに入ります!!

 

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  • この記事を書いた人

中田 開人

PT,CSCS,MS(スポーツ科学) 早稲田大学大学院博士後期課程 1996年7月22日生まれ 北海道札幌市出身 アスリートのパフォーマンスを高める専門家(S&Cコーチ)として活動しています。

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