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17|水平方向の減速動作について考える(エクササイズ編)※2021年12月現在の考え

今回の記事では、前々回の記事で話した水平方向の減速動作の基礎知識を基に、そしたら具体的にどういったトレーニングがオススメされるかについて話していきたいと思います。

 

👆減速動作に関する基礎知識をまとめた前々回の記事です。まだお読みでない方は是非!

※2021年12月現在の考えです。今後変わる可能性はあります。

 

1.膝伸展筋の伸張性筋力と減速動作の関係性

前々回の記事でも話した通り、水平方向の減速動作では走行中に生じている運動量を短い接地時間の中で急激に減少させる必要があるため、下肢筋群に高負荷の伸張性ストレスがかかります。

 

したがって、水平方向の減速動作を強化するためのトレーニングとしては、伸張性負荷を強調したトレーニングが推奨されると考えられます。

 

また、下肢筋群の中でも水平方向の減速動作では、減速時の膝の屈曲に抵抗するために特に大腿四頭筋に対して高い伸張性ストレスがかかると考えられています。

事実、Colby et al.(2000)は、水平方向の減速動作の接地時に、大腿四頭筋では最大随意収縮の150%を越える筋活動が観察されることを報告しています¹。

 

では実際に、大腿四頭筋の伸張性筋力が高い人というのは、水平方向の減速能力も高いのでしょうか??

 

この疑問に対する答えを提供したのが2021年に行われたHarper et al.の研究です²。

彼らは等速性ダイナモメーターを用いて『膝伸展筋(大腿四頭筋)の短縮性あるいは伸張性筋力』を測定し、それらと『水平方向の減速能力』の関係性を調査しました。

 

その結果、彼らは水平方向の減速能力』と『動作速度が比較的遅い伸張性膝伸展筋力』との間に高い相関関係が存在することを報告しました。

しかしながら、重要なことに『比較的速い膝伸展筋力』と『水平方向の減速能力』との間には相関関係は観察されませんでした。

 

これは結構意外じゃないですか??

だって、減速動作って最初にも話した通り、めちゃめちゃ短い時間の中で高い力を発揮する必要がある動作なので、速い速度で行われるときの伸張性筋力の方が関係してそうじゃないですか。

ただ彼らの研究結果からは真逆の結果が得られました。

 

これらの結果を踏まえると、減速能力を高めるトレーニングとして例えばスクワットを行うときに、下降局面(減速局面)を素早く実施するよりもゆっくりと効かせながら行った方がいいのかもしれません。

実際にHarper et al.も上記の論文の中で、

strength and conditioning practitioners should seek to design and select exercises challenging the KE musculature in slow tempo eccentric contractions
S&C指導者は膝伸展筋をゆっくりとしたテンポで伸張性収縮させるエクササイズをデザインし、選択する必要がある

と述べています。

 

2.膝関節の安定性(stability)も重要!

ここまでの話から、

大腿四頭筋の伸張性筋力が大事なら、レッグエクステンションのマシーンで伸張性局面を強調したトレーニングが一番よさそうじゃない??」

という疑問が出てきそうですが、

個人的に多少なりとも効果はあると思う一方で、最善な方法ではないと考えています。

 

というのも、これまでの研究で『膝関節の安定性』も水平方向の減速能力と関係があるのではないかと考えられているからです³。

しつこく話している通り、減速動作というのは身体の関節に高い負荷が加わる動作になります。

そしてこの高い負荷に対抗して素早く減速するためには下半身の関節を用いて効率よく衝撃を吸収する必要があります。

そのため、もし仮に膝がグラグラするような不安定な人だと、効率的に床から伝わる力(床反力)を吸収することが出来ないでしょう。

 

そしてこの膝関節の安定性を高めるためには、
前側の大腿四頭筋だけでなく、後ろ側のハムストリングスも同時に収縮させる必要があります。

Zhang et al. (2021)は実際に論文の中で、

a high coordination and torque balance between knee flexor and knee extension should be considered as a potential determinant of knee joint stability, which may assist deceleration performance.
膝関節の安定性を決定する要因として、膝関節屈曲筋(ハムストリングス)と膝関節伸展筋(大腿四頭筋)の高い協調性とトルクバランスを考慮する必要があり、減速能力を補助する可能性がある。

と述べています³。

したがって、上に書いたレッグエクステンションのような大腿四頭筋にしか刺激が入らない種目だと、膝関節の安定性を高めるのには不十分かもしれません。

 

この様な理由から、水平方向の減速能力を高めるトレーニングには大腿四頭筋だけでなくハムストリングスも同時に活動するような種目がいいのかなあと個人的には思っています。

 

さて、ダラダラとここまで書いてきましたが、次のセクションでは水平方向の減速能力を高めるのに個人的にオススメなエクササイズを実際に紹介していきます。

 

3.水平方向の減速能力を高めるトレーニング例

以上の点を踏まえて個人的に「この種目は減速能力を高めるのにいいかも!?」と思ったものを5個ほど挙げていきます。

※個人的な考えを基にしているので、「これよりもこっちの方が良くない??」などの意見があれば遠慮なく言って下さると嬉しいです。

 

①バックスクワットあるいはフロントスクワット

  • ポイント👉どちらも降ろすときゆっくりと効かせながら行うこと
  • ポイント👉大腿四頭筋に刺激が入りやすいフロントスクワットも個人的にオススメ!

 

②片脚フロントスクワット

  • ポイント👉降ろすときは5秒かけてゆっくりと!
  • ポイント👉膝が内側に入らないように意識しながら行う!

※バーベルの片脚スクワットはかなり難しいので最初はダンベルを使ったフロントスクワットをオススメします!

 

③過負荷伸張性スクワット

  • ポイント👉一人で持てない重量を選択する
  • ポイント👉降りるときは5秒かけてゆっくりと

※過負荷伸張性スクワットに関しては、最近のメタ分析で方向転換能力を高めるのに効果的であることが示されています⁴。

 

④ドロップジャンプ

  • ポイント👉接地時間を出来るだけ短くするように意識する!
  • ポイント👉足首を固めて着地すること!

※ドロップジャンプ中のRSIが高い人ほど水平方向の減速能力が高いとの報告があるため⁵、高速SSCに分類されるプライオメトリックエクササイズ(デプスジャンプ、ドロップジャンプ、リバウンドジャンプなど)は効果的かも

 

⑤ウォーターバッグダッシュ&ストップ(より実践向き)

  • ポイント👉膝をしっかりと曲げて減速する!
  • ポイント👉ウォーターバッグは縦に持って減速するときに中の水が大きく動くようにする!

これは個人的にお気に入りの種目で、バックペダルに切り替える際に水の揺れが大きくなるので、膝を意識的に安定化させる必要があります。

 

ここで挙げたトレーニングは主にウエイトルームで実施できるメニューを挙げていますが、
減速動作はテクニック的な面も重要になるかと思いますので、上で挙げたようなウエイトトレーニングに加えて、フィールドでより実践的な練習も行うことでより減速能力は向上すると個人的には思います。

 

以上で今回の内容は終わります。

ではまた!!

 

参考文献

  1. Colby S, Francisco A, Yu B, Kirkendall D, Finch M, Garrett W Jr. (2000). Electromyographic and kinematic analysis of cutting maneuvers. Implications for anterior cruciate ligament injury. Am J Sports Med, 28(2):234-240. 
  2. Harper DJ et al. (2021). Relationships Between Eccentric and Concentric Knee Strength Capacities and Maximal Linear Deceleration Ability in Male Academy Soccer Players. J Strength Cond Res. 35(2), 465-472.
  3. Zhang Q et al. (2021). Relationship Between Explosive Strength Capacity of the Knee Muscles and Deceleration Performance in Female Professional Soccer Players. Front Physiol.12, 723041.
  4. Liu R et al. (2020). Effect of eccentric overload training on change of direction speed performance A systematic review and meta-analysis. J Sports Sci. 38(22), 2579-2587.
  5. Harper DJ et al. (2021). Drop jump neuromuscular performance qualities associated with maximal horizontal deceleration ability in team sport athletes. Eur J Sport Sci. 1-12.

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追伸

もうすぐで12月が終わりますね。。

最近は何をしているかというと、今年中に論文を投稿できるように研究室に籠って論文書いてます(笑)早く投稿してしまって解放されたいものです。。(まだ修士発表会の準備も残ってますが汗汗)
←最近買った本たち(一番左は指導教員から借りた本)

年末年始は北海道に帰って、友人とスノボに行ったりご飯に行ってこようと思っています!今からめちゃめちゃ楽しみです😂

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  • この記事を書いた人

中田 開人

理学療法士,CSCS 1996年7月22日生まれ 北海道札幌市出身 アスリートのパフォーマンスを高める専門家(S&Cコーチ)として活動しています。

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