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16|【論文レビュー】最大筋力向上は使用重量、筋肥大はトータルボリュームが鍵を握っている!(最新論文)

今回の記事では、最大筋力を高めるトレーニングと筋肥大を狙うトレーニングでは、どういったセットの組み方をしていけばいいのかについて、最新の論文を基に話してきたいと思います!

皆さんは筋力を高めるのに、あるいは筋肥大を狙うのにどういったことを意識してトレーニングメニューを組んでいますか??

 

一般的に、

 

最大筋力向上👉高強度×低レップ

筋肥大👉中強度×高レップ

 

がよく用いられているセットの組み方かと思います。

僕個人的に、このセットの組み方は悪くないと思いますが、

では逆に考えて、

中強度のトレーニングは最大筋力向上には好ましくないんでしょうか?

また、

高強度トレーニングは筋肥大には適していないんでしょうか?

 

最初に結論から話すと、タイトルにも書いてある通り、今現在では

最大筋力を高めるには高強度の負荷を用いること、筋肥大を狙うにはトータルボリュームを稼ぐこと

が重要であると考えられてます。

 

ちなみにトータルボリュームとは、

「使用重量×セット数×レップ数」

で求められる値になります。

例えばベンチプレスを100kgで5レップ×3セット行った場合、トータルボリュームは

100(使用重量)×5(レップ数)×3(セット数)=1500

となります。

 

本記事では、最大筋力向上には使用重量、筋肥大にはトータルボリュームが重要であることを示唆している研究を紹介しようと思います。

紹介論文

今回紹介する論文の筆頭著者は東大の久保先生で、今年発表されたばかりの論文です。

Kubo K et al. (2021). Effects of 4, 8, and 12 Repetition Maximum Resistance Training Protocols on Muscle Volume and Strength. J Strength Cond Res, 35(4), 879-885.

 

1.実験概要

被験者は42人の普段トレーニングを行う習慣がない人たちが参加し、均等に4群に分けられました。

各群の概要は以下の通りです。

4RM群👉1RM90%(4RM)×4×7セット
8RM群👉1RM80%(8RM)×8×4セット
12RM群👉1RM70%(12RM)×12×3セット
コントロール群👉トレーニングを行わない

4RM、8RMそして12RM群は計10週間のベンチプレストレーニングを週2回実施しました。

また、3週目までは3群とも同じトレーニングを行い(トレーニングに慣れ、正しいフォームを身に着けてもらう目的)、4週目から10週目にかけては上の囲いで示したプロトコルに分かれてトレーニングが実施されました。

 

ここで重要な点があります。

それはベンチプレストレーニングを行った3群のトータルボリュームが揃えられたという点です。

上に示したトレーニングプロトコルをよく見てみると、群毎に実施しているセット数が異なります(4RMは7セット、8RMは4セット、12RMは3セット)。

この調整は3群間のトータルボリュームを揃える目的で行われています。

 

トレーニング介入前後にベンチプレスの1RM(最大筋力)とMRIを用いた大胸筋の筋横断面積(筋肥大)の測定を行いました。

 

また、最大筋力の向上率筋横断面積の増加率との間の相関関係も調査されており、
『トレーニング介入によって向上した最大筋力が、どれだけ筋横断面積の向上によって説明されるか』
も一緒に検討されました。

 

2.結果

 

では本実験の主要な結果を示していきます。

結果① 最大筋力の変化

まず最初に各群の最大筋力が10週間のベンチプレストレーニング後にどれだけ変わったかを示していきます。

 

グラフの縦軸はトレーニング介入前後のベンチプレス1RMの変化率を%で表しています。

上で示した結果から分かることを以下にまとめました。

  • 4RM群と8RM群はそれぞれ12RM群よりも最大筋力を向上させた
  • 4RM群と8RM群の最大筋力向上の程度に差はみられなかった

 

結果② 筋横断面積の変化(どれだけ筋肥大したかの結果)

次にトレーニング介入後に筋横断面積がどれだけ変化したかの結果を示します。

こちらのグラフの縦軸はトレーニング介入前後の筋横断面積の変化率を表しています。

こちらのグラフから分かることを下にまとめました。

  • 全ての群が筋横断面積を大きくすることができた
  • ただ、トレーニングを行った群間に差はみられなかった

結果③ 最大筋力の変化率と筋横断面積の変化率との関係性

最後に、各トレーニング群の最大筋力の変化率と筋横断面積の変化率との相関関係の結果を示します。

これは上から4RM群、8RM群、12RM群の結果です。

結果から、4RM群と8RM群は最大筋力の変化率と筋横断面積の変化率との間に相関関係はみられませんでしたが、12RM群では相関関係が観察されました。

この結果から分かることは以下の通りです。

  • 4RM群と8RM群でみられた最大筋力の向上は筋肥大だけでなく、それ以外の要因も関わっている可能性がある
  • 12RM群で観察された最大筋力の向上は大部分が筋肥大によって生じている可能性がある

 

重要な結果は以上になります。

 

3.考察

では、本実験の結果から分かったことを僕の考えも少し織り交ぜながら話していきたいと思います。

 

最大筋力は使用重量に左右される可能性

まず、最大筋力の変化率の結果について、
全てのトレーニング群で最大筋力は向上したものの、
4RM群と8RM群の変化率は12RM群でみられた変化率よりも高い結果となりました。

このことから、最大筋力は使用している重量が高重量の方が向上しやすい可能性が示唆されました。

 

しかし、4RM群は8RM群よりも使用している重量は重いにも関わらず(1RM90% > 1RM80%)、最大筋力の変化率は同程度でした。

 

筋力は主に、骨格筋量神経学的要因(運動単位の動員数や発火頻度の増加など)の2つによって変化することが知られていますが、

骨格筋量の変化率(筋横断面積の変化率)に関しては4RMと8RMの間で差がなかったことを考えると、

もしかすると、神経学的要因によって最大筋力を向上させるには、1RM80%(8RM群)以上の負荷強度で十分なのかもしれません。

(神経系についての調査は今回の研究では行われていないので、あくまで推測になりますが)

 

筋肥大はトータルボリュームに左右される可能性

次に筋横断面積の結果について話していきたいと思います。

結果②を見てみると、トレーニングを行った3群とも筋横断面積の変化率に差はみられませんでした。

この結果については意外に思った方もいるかもしれません。

最初にも話した通り、一般的に筋肥大を狙うトレーニングでは、中強度×高レップのトレーニングがよいとされていますが、
本研究の結果から、たとえ高重量を扱ったとトレーニングであっても、トータルボリュームを揃えた場合では筋肥大の程度に差はなくなることが示唆されました。

 

この研究の結果と同じように、Schoenfeld et al.(2014)は、中程度の負荷強度で高レップ実施するプロトコルと高強度の負荷強度で低レップ実施するプロトコルのトータルボリュームを揃えた場合、筋肥大の程度に差がないことを報告しています¹⁾。

さらには、相対強度が同程度のレジスタンストレーニングを行った場合では、トータルボリュームが多い群の方が高い筋肥大を示すことも報告されています2)

 

したがって今現在では、筋肥大を促進するには使用する重量が何であれ、トータルボリュームを稼ぐことが大切であるとされています。

 

ただ、ここで注意しなければいけない点があります。

それは、高強度を用いて中強度×高レップのトレーニングと同程度の筋肥大を狙う場合には沢山のセットを行わなければいけないという点です。

当たり前ですが、高強度の負荷を用いた場合ではこなせるレップ数も必然的に少なくなってしまうため、高重量を使ったトレーニングでトータルボリュームを稼ぐには沢山のセットをこなす必要があります。

実際に今回の研究でも、4RM群は12RM群とトータルボリュームを揃えるために、12RM群の2倍以上のセット数をこなしています(7セットvs3セット)。

 

これって冷静になって考えるとめちゃめちゃ時間かかりますよね。。。

 

また、時間的な面だけでなく、高重量の負荷を何セットも実施してしまうと使われている関節にも大きな負担がかかってしまうでしょう。

 

この様な理由から、僕個人的にはやはり、中強度×高レップのトレーニングが筋肥大を促進するのには適している気がします(最大筋力の向上はあまり望めないかもしれないが)。

 

12RM群でみられた筋力の向上は、多くが筋肥大によるもの

最後に、最大筋力の変化率と筋横断面積の変化率の結果について考察してみます。

結果は、12RM群のみ最大筋力の変化率と筋横断面積の変化率との間に相関関係が確認されましたが、4RM群と8RM群では相関関係が確認されませんでした。

したがって、12RM群でみられた筋力向上の多くは筋肥大によって説明できるのに対し、4RM群と8RM群でみられた最大筋力の向上は筋肥大以外の要因も関わっている可能性が示唆されました。

 

先程も述べた通り、筋力の向上は主に骨格筋量の要因神経学的要因によって影響を受けるといわれています。

おそらく、12RM群は骨格筋量の要因が最大筋力の向上に大きく貢献した一方で、神経学的要因の貢献度はそれほど大きくなかったのかもしれません。

一方で、4RM群と8RM群は骨格筋量の要因に加えて、神経学的な要因も最大筋力の向上に大きく関与したため、筋横断面積との相関関係がみられなかったと考えられます。

 

実際に結果①の最大筋力の結果でも示した通り、4RM群と8RM群が12RM群よりも最大筋力を向上させており、おそらくこの二つの群は高強度のトレーニングによって神経学的な要因も大きく向上したのでしょう。

 

まとめ

今回は最大筋力と筋肥大を向上させるのにどのようなトレーニングプロトコルが好ましいのかについて、最新の研究を元に話してきました。

今回の重要なポイントは以下の通りです。

  • 最大筋力の向上は使用した重量に左右され、比較的高強度(1RM80%<)が好ましい
  • 筋肥大を狙うにはトータルボリュームを稼ぐことが重要である可能性
  • ただ、高強度でトータルボリュームを稼ぐことは、時間的および傷害予防面から望ましくないかもしれない

 

今回の記事はアスリートのみならず、普段身体を鍛える目的でトレーニングをされている方にも応用できる内容かと思いますので、ぜひ参考にしてみてください!!

 

今回の記事は以上になります!

 

ではまた!

 

参考文献

  1. Schoenfeld BJ et al. (2014). Effects of different volume-equated resistance training loading strategies on muscular adaptations in well-trained men. J Strength Cond Res. 28(10), 2909-2918.
  2. Schoenfeld BJ et al. (2019). Resistance Training Volume Enhances Muscle Hypertrophy but Not Strength in Trained Men. Med Sci Sports Exerc. 51(1), 94-103.

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追伸

来週からついにインカレが始まります!

4年生もこの大会で引退するので最後にこれまでの集大成をぶつけてきてほしいですね^_^

僕も応援に行ってきます!

 

ちなみに最近は自分もトレーニングを頑張っていて、クリーンを沢山練習してます🏋️‍♀️

リストストラップも買いました↓

 

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  • この記事を書いた人

中田 開人

理学療法士,CSCS 1996年7月22日生まれ 北海道札幌市出身 アスリートのパフォーマンスを高める専門家(S&Cコーチ)として活動しています。

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