トレーニングプログラム作成

8|試合期にトレーニングが再開された場合にすぐに速度を意識したパワーエクササイズを行うべきか

先日ついに緊急事態宣言が明けて、

僕が指導している部活動も1か月ぶりにトレーニングができるようになりました。

 

久しぶりにトレーニングを再開する場合、通常試合が近くなければ筋力を戻すことに注力するべきかと思いますが、

現在、指導している部活ではちょうどリーグ形式の試合(2か月間程度)が始まった時期でもあり、

毎週末に試合が予定されています。

 

この様な状況下でトレーニングメニューを組みにあたって、僕の中では2つの選択肢がありました。

1つ目が

「再開した週から速度を意識したトレーニング(VBTなど)を取り入れるべきか」

2つ目が

「試合期間に入っていたとしてもまずは、筋力を戻すことに集中するべきか」

 

結論から言うと、僕は他の人の話なども聞いた上で、2つ目の方法を選択しました。

 

今回はこの考えに至った経緯などを話していきたいと思います。

 

筋パワーのベースとなる筋力を戻すことが先決

今回のケースで、まずは筋力を戻すことに集中すべきと考えたのは、

やはり、筋パワーを高めるにあたって、まずは土台となる筋力を戻すことが先決だと思ったからです。

 

1~2週間程度のトレーニング休止期間であれば、大きな筋力低下も生じていなかったかもしれませんが、今回の場合は1か月弱のトレーニング休止期間があったため、依然と比べると筋力は大きく落ちていると予想されます。

 

そのような状況で、トレーニングを再開した週から筋パワー系のトレーニングを行ってもベースの筋力が低いことで、筋パワーも効率よく高められないと考えました。

 

試合が近いことでパワー系トレーニングを優先して、できるだけ早くパワーを高めたいという気持ちもよぎりましたが、このような状況ではかえって遠回りになると考えました。

 

ただ、今回のケースでは、ある程度筋力向上に集中する期間をとったあとはすぐに筋パワー系も取り入れたトレーニングに移行しようと考えています。

というのも、トレーニングの休止期間が1か月弱ありましたが、トレーニング休止期間前までは十分にトレーニングを行えており、フィットネスも思うように高めることができていました。

この様なトレーニング休止前にしっかりと筋力を高めることができていれば、トレーニング再開後の筋力向上は1度目よりも早いとされています(俗にいう”マッスルメモリー”)1)

なので、今回のケースでは筋力向上が比較的早期に戻ると考え(100%までは無理かもしれないが)、筋力集中期間を1~2週間程度で済ませようと考えています。

 

また、久しぶりのトレーニングということもあり、いきなりがっつりとトレーニングをしてしまうと練習や週末の試合に支障をきたすほどの筋肉痛が出ることが予想されます。

なので、再開した週はトレーニングボリュームをかなり抑えめにして、たとえ筋肉痛が出たとしても、練習や試合に支障をきたさないようなトレーニングメニューを組む必要があると思います。

 

軽めの筋肉痛が出る程度であっても一度刺激を与えておけば、次回以降のトレーニングで生じる筋肉痛の程度も比較的抑えられるので(繰り返し効果)、翌週以降のトレーニングにもつながると考えてます。

 

速度を意識するあまり怪我をする危険性が高まる

2つ目に、久しぶりに速度を意識したトレーニングを行うことで傷害発生のリスクが高まると考えました。

 

例えば、ベンチプレスをフォームを意識せずにとにかく速く挙げることばかり考えていると、

バーベルを本来降ろしたいポイントから外れてしまい肩を痛めるリスクが高まります

 

僕の考えとしては、速さを意識するトレーニングを遂行する前提として、
しっかりとしたフォームが身に付いていることが必要
だと考えています。

それでないと目的した筋に刺激が入らないだけでなく、上で話したように怪我のリスクが高まると考えているからです。

トレーニングを長期間休止していた場合、僅かであっても適切なフォームから外れている可能性があり、この様な状況ではフォームを再習得させることが先決であると考えました。

 

なので、今回のように久しぶりに行うトレーニングでは、
選手たちには非常に軽い重量から行ってもらい、フォームを意識しながら取り組んでもらおうと考えています

 

まとめ

今回は試合期にトレーニングが再開したときに速度を意識したトレーニングを行うべきか否かについて話しました。

僕は以下の2つの理由で、最初の1~2週間は速度を意識したトレーニングを行わず、筋力向上に集中したトレーニングを行うことに決めました。

  • 筋パワーの土台となる筋力を戻すことが先決で、その方が近道になると考えた。
  • 再開してすぐに速度を意識したトレーニングを行うことで怪我のリスクが高まると考えた。

 

今回のようなケースは比較的レアケースだと考えていますが、コロナ関係で同じような状況立たされている指導者も少なからずいるかと存じます。

なので今回の記事が少しでもそのような方の役に立てればと思います。

 

また、今回の決断はもしかすると他の人では別の方法をとるかもしれません。

実際、トレーニングメニューを組むときには試合時期だけでなく、

「一番標準を合わせたい試合はどこか?」であったり、「選手が自主的にトレーニングを継続して行っていた」などその他の要因も考慮して組む必要があるので、置かれた状況によって柔軟に考える必要があると思います。

 

ただ、今回のようなケースではこの選択がベストであると僕自身は考えています。

今回のようなケースも闇雲にメニューを組むのではなく、自分の中で根拠をしっかりと持って決断するのが良いと思います。

 

参考文献

1.Bruusgaard JC et al. (2010). Myonuclei acquired by overload exercise precede hypertrophy and are not lost on detraining. Proc Natl Acad Sci U S A. 107(34), 15111-15116.

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  • この記事を書いた人

中田 開人

理学療法士,CSCS 1996年7月22日生まれ 北海道札幌市出身 アスリートのパフォーマンスを高める専門家(S&Cコーチ)として活動しています。

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