アスリートのトレーニングプログラムを組む上で、どんなプログラムが最大筋力を高めるのに有効かを知っておくことは重要です。
皆さんもご存知の通り、最大筋力の向上は使用した重量の影響を大きく受けることが知られています。
例えば、Training Volume※が揃えられている前提で考えると、
1RM50%でトレーニングしているアスリートよりも1RM80%の重量を扱っているアスリートの方が長期的にみた時に最大筋力が向上する可能性が高いでしょう。
参考
Training Volume = 使用重量(kg)×レップ数(回)×セット数
使用重量と最大筋力との関係に関しては以前に本ブログ内でも触れているので、もし興味がある方はそちらもご覧下さい👇
では、ここで1つ疑問が挙がります。
「最大筋力を高める上で週当たりのTraining Volumeは多い方がいいのか?」
巷では、”最大筋力は使用重量、筋肥大はTraining Volumeが重要!”ということが広まってきてますが、
最大筋力とTraining Volumeとの関係についてはあまり知られていない印象を受けます。
そこで今回は、最大筋力とTraining Volumeとの関係について、いくつかの文献を参考に僕なりの考えを共有していきたいと思います。
目次
1.Training Volumeと最大筋力はあまり関係していない?
まず初めに、2019年にSchoenfeld BJ et al.が報告した研究を紹介します。
彼らは、トレーニングを普段から行っている34名の健常男性を、上半身と下半身を含む8種類のエクササイズをそれぞれ1セット、3セットあるいは5セット実施する3つの条件にランダムに振り分け、
8週間後の最大筋力ならびに筋肥大の増強程度を調査しました。
ちなみに週当たりのセット数で見ると、上半身下半身それぞれ1セット条件では6セットと9セット、3セット条件では18セットと27セット、5セット条件では30セットと45セットでした。
その結果、筋肥大に関しては、Training Volumeが多い条件になるにつれて増強効果が高いことが明らかとなりました。
これに関しては予想通りの結果だったかと思います。
一方で、最大筋力の結果に関しては、全ての条件間でベンチプレスならびにスクワットの1RMに有意差が観察されませんでした。
これは少し意外な結果かもしれませんね。
「え、頑張れば頑張るほど筋力高まると思ってた、、、」
と思ってた方もいるかもしれません。
この研究では5セット条件は1セット条件よりも約5倍以上のトレーニング時間を費やしており、論文内にて筆者は、
参考
These findings indicate that resistance-trained individuals can markedly enhance levels of strength by performing only ~39 min of weekly RT, with gains equal to that achieved in a fivefold greater time commitment.
これらの知見から,普段からRT行なっている人は週1回のRTを~39分行うだけで,筋力レベルを著しく向上させることができ,5倍以上の時間をかけた場合と同等の効果が得られることが示された.
とも述べています。
2.Training Volumeと最大筋力は関係している!?
その一方で、Training Volumeを稼ぐと最大筋力の増加に有効であると報告した研究も存在します。
Marshall PW et al.は、普段からトレーニングを実施している32名の健常男性を、1RM80%のスクワットを1セッション内で1セット、4セットあるいは8セット実施する条件にランダムに振り分け、スクワット1RMにもたらす影響を調査しました。
その結果、以下の結果が得られました。
ポイント
①3週目の時点で、4セット条件と8セット条件のみBaselineよりも最大筋力が高くなった。
②3週目と6週目の時点で、8セット条件は1セット条件よりも高い1RMを示した。
③1セット条件は6週目の時点でBaselineよりも高い値を示した。
したがって、1セッション当たりに複数セット実施した条件は単発セット実施した条件よりもより早期に最大筋力を高められる可能性が明らかとなり、
加えて、週当たり16セット実施した条件は2セットする条件よりもより高い増強効果を示す可能性も同時に示されました。
「え、さっき示した論文ではVolumeと最大筋力は関係ないと言ってたのに、この論文では関係してるんかい!」
と思った方もいるかもしれません。
このような一見すると矛盾している結果に関して、一つ考えられる見解として、
”極端に少ないTraining Volumeは最大筋力向上に対しては不向きかもしれない”
という考え方ができるかもしれません。
最初に紹介したSchoenfeld BJ et al.(2019)の研究では、最も少ない条件であっても最低でも6セット実施しているのに対し、Marshall PW et al.(2011)の研究で示された条件では週当たり2セットとかなり少ないことがわかります。
そのため、もしかすると週当たり2セット以下のような極端に少ないTraining Volumeは最大筋力向上に対する最適解ではないかもしれません。
3.Training Volumeと最大筋力との関係を調査したメタ分析(2017年)
実際にTraining Volumeと最大筋力との関係を調査したメタ分析も存在します。
Ralston GW et al.は週当たり5セット以下(LWS)、5-9セット(MWS)、10セット以上(HWS)に分け最大筋力にもたらす効果を調査しました。
主な結果は以下の通りです。
ポイント
①MWS、HWSはLWSよりも筋力増加に対して”わずかに”効果的である可能性
②中間に位置するトレーニー(初心者でも上級者でもない)にとって、多関節/単関節エクササイズの両方において筋力増強効果に関して用量反応関係が存在する可能性
この研究からも、極端に少ないTraining Volume(この研究では5セット以下)は最大筋力向上にとって効果的ではない可能性が示唆されます。
しかし、こちらのメタ分析で示されたLSWと高頻度条件(MSW+HSW)間の最大筋力にもたらす影響に関する効果量はd = 0.18 (trivial)であり、非常に低いことがわかります。
(≦0.2: trivial; ≦0.5: small; ≦0.8: moderate; >0.8: large)
したがって、確かに週当たりのTraining Volumeが少ないと最大筋力向上は最適化されないかもしれませんが、気にするほど大きな差にはならないかもしれません。
まとめ
以下本記事のまとめです。
- Training Volumeが最大筋力にもたらす影響に関しては一貫した結果が得られていない
- 週当たり2セットほどの極端に少ないTraining Volumeは最大筋力向上の観点から最適ではない可能性
- Training Volumeと最大筋力との間に関連性は多少なりともあるかもしれないが、それほど大きな関連性はないかもしれない
このことから、1つの筋群に対しておおよそ5セット/wk以上組むことでより効果的に最大筋力を高められるのでは?と個人的には考えています(もちろん重量も考慮に入れる必要はあり)。
そのため、特に試合期などで十分なトレーニング時間を確保できない場合においても、各筋群に対して最低でも5セットほど組んでおくと筋力維持(あわよくば向上)する点において効果的かもしれません。
ただ、先述した通りTraining Volumeが最大筋力にもたらす影響力は大きいものではないため、それほど神経質にもなる必要はないかもしれません。
簡単ですが、今回の記事はこれで終わります。
ではまた!!
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追伸
先日,誕生日を迎え27歳になりました!
大学を卒業してから年を重ねるのが一瞬すぎて焦ってます。。。
27歳は自分の将来のことも少し考えながら、今できることに集中して自己研磨していければと思っています。
27歳の年、将来に向けてアクションを起こしていきます👊
誕生日には富良野に旅行に行ってきました!めちゃめちゃ晴れてて最高でした☀️(写真は富良野で有名な青い池)