スクワット 解剖学

4|スクワットのしゃがむ深さをパラレル以下に統一してる理由

2021年9月12日

僕はスクワットを指導するときに、出来るだけパラレル以下までしゃがむように指導しています。

その理由について、今現在3つ考えがあるので共有したいと思います。

 

スクワットの深さの定義

まずは、スクワットの深さによって分けられるスクワットの名称をまとめたいと思います。

最初に「フルスクワット」とは、大腿が床と平行になるよりもしゃがみ込むスクワットのこといい、

大腿と下腿の角度が35-45°程度になります。

 

2つ目に「パラレルスクワット」とは、大腿が床と平行になるまでしゃがみ込むスクワットのことをいいます。

 

3つ目に「ハーフスクワット」とは、大腿と下腿のなす角度が90°になるまでしゃがみ込むスクワットのことをいいます。

 

最後に「クォータースクワット」とは、大腿と下腿のなす角度がだいたい110-140°程度になるスクワットだといわれています。

 

なのでパラレル以下とは、パラレルスクワットかフルスクワットのことを言います。

 

理由1:内転筋に刺激を与えたい

僕がパラレル以下のスクワットを勧める1つ目の理由として、内転筋を鍛えたいという理由があります。

 

内転筋は股関節の内転作用のイメージが強いですが、実は内転筋の一つである長内転筋は股関節の内転作用の他に

過度な股関節屈曲時では伸展作用

過度な股関節伸展時では屈曲作用に働くことが知られています¹

なので、スクワットで深くしゃがみ込むことで長内転筋の伸展作用が強く働くことが考えられます。

一方で、代表的な内転筋群の一つである大内転筋は大殿筋と似た走行をしており、

こちらも、深いスクワットをしたときに股関節の伸展作用を働かせます。

 

これらを踏まえて、僕は内転筋を強化するために深いスクワットは効果的だと考えています。

 

僕も、パラレルスクワットやブルガリアンスクワットをやった次の日になると

太ももの内側に強い筋肉痛を経験することが多いです。

 

実際に、ハーフスクワットとフルスクワットを長期間実施した研究によれば、

トレーニング介入後、フルスクワット群はハーフスクワット群よりも内転筋の筋横断面積が向上したと報告されています²。

 

内転筋に関してはまた機会があれば詳しく話したいと思います。

 

理由2:大殿筋に刺激を与えたい

2つ目の理由として、大殿筋にも十分に刺激を加えたいという点があります。

スクワットではしゃがむ深さを深くするほど、大殿筋の筋活動が高くなることが報告されているため³

怪我や何らかの理由で深くしゃがめない時以外は、

ハーフスクワットよりもパラレル以下のスクワットを推奨しています。

 

理由3:測定時にパラレル以下が基準としてわかりやすい

最後の理由として、しゃがむ深さをパラレル以下にしておくと、

指導者側と実施している選手側の両方から、ちゃんとしゃがめているかが分かりやすいというメリットがあります。

当たり前ですが、しゃがむ深さが浅いとその分だけで重い重量が扱えてしまいます。

なので、例えばハーフスクワットで測定する際に、

ちゃんと大腿と下腿のなす角度が90°に達したかが確認できていないと、

本来の1RM値よりも誤って高く評価してしまう可能性が高くなります。

 

その点、パラレル以下の深さだと、選手同士で確認したとしても

「今の浅かったなー」

などとわかりやすいことが多いです。

 

測定毎にしゃがむ深さに差が出てしまうと、前回からどれだけ筋力が上がったかが分かりにくいですが

パラレル以下に統一するとそういったことが起きません。

 

ただ、何かのデバイスなどを用いて大腿と下腿のなす角度が90°とわかるのであれば、

3つ目の理由に関してはハーフスクワットでもいいと思います。

(↓最近ではスクワットの深さを測ってくれるアプリがあります)

 

まとめ

今回は僕がスクワットを出来るだけパラレル以下で行わせる理由について話しました。

理由は以下の3つです。

 

  • 内転筋に十分な刺激を与えたい
  • 大殿筋にも十分な刺激を与えたい
  • 測定時に基準を統一することができる

 

また考えは変わるかもしれませんが、今現在はこのような理由です。

 

参考文献

  1. Hoy MG et al. (1990). A musculoskeletal model of the human lower extremity: the effect of muscle, tendon, and moment arm on the moment-angle relationship of musculotendon actuators at the hip, knee, and ankle. J Biomech, 23(2), 157-169. 
  2. Kubo K et al. (2019) Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes. Eur J Appl Physiol, 119(9), 1933-1942.
  3. Caterisano A et al. (2002). The effect of back squat depth on the EMG activity of 4 superficial hip and thigh muscles. J Strength Cond Res. 16(3), 428-432.
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  • この記事を書いた人

中田 開人

理学療法士,CSCS 1996年7月22日生まれ 北海道札幌市出身 アスリートのパフォーマンスを高める専門家(S&Cコーチ)として活動しています。

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