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12|腹筋ローラーをすると腰を痛めやすい理由

2021年11月2日

今回は筋トレ好きなら一度はやったことがあるであろう「腹筋ローラー」と腰痛の関係性について話そうと思います。

 

腹筋ローラーは大きく分けて膝を床について行う「膝コロ」と膝を床につけないで行う「立ちコロ」の2種類あります。

〇膝コロ↓

〇立ちコロ↓(見本のつもりでやりましたがこれ以上遠くは無理でした(笑))

 

腹筋ローラーでは重力によって身体が潰れてしまわないように、腹筋群の大きな伸張性収縮を伴いながらローラーを前方に転がすため、久しぶりに行った次の日以降にはしばしば著しい筋肉痛が生じます。

腹筋ローラーが人気のエクササイズになったのは、エクササイズ後に大きな筋肉痛が発生してエクササイズの効果を感じやすいからなのかなあと個人的に思っています(笑)

 

ただ、この腹筋ローラーには大きな欠点があります。

それが、「腰を痛めやすい」という点です。

実際に僕自身も腹筋ローラーをやると、僕の場合は一時的ですが、腰に痛みが生じます。また、実際に選手にやらせたときにも「腰が痛い!」という声がチラホラ聞こえてきます。

そこで今回の記事では、なぜ腹筋ローラーをすると腰が痛くなりやすいのかを解剖学的な視点から解説していきたいと思います。

 

1.過度な骨盤前傾による腰椎前弯角度の増加は椎間関節ストレスを高める

まず最初に、骨盤の傾斜と腰椎の関係性について話していきます。

腰椎は骨盤と連結しており、骨盤が前傾すると腰椎の元々の前弯角度が増大します。

一方で、骨盤が後傾すると腰椎の前弯角度は減少します。


したがって、骨盤の傾斜角度に影響を与える筋というのは、間接的に腰椎の前弯角度にも関わっているということになります。

そして、骨盤を後傾させる筋の収縮力が前傾させる筋の収縮力に対抗することが出来なければ、骨盤は前傾し、間接的に椎間関節に過度な前弯ストレスがかかります(下の図参照)。

具体的に骨盤を前傾させる筋の中には、

股関節屈筋群(大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋など)
広背筋

などが挙げられ、骨盤を後傾させる筋には、

腹筋群
大殿筋

などが挙げられます。

また、骨盤を介さなくても、大腰筋という筋は腰椎に直接付着しているため、大腰筋が収縮すると直接的に腰椎を前弯させる方向に力が働きます。

 

では実際に次のセクションで、腹筋ローラー中にこれらの筋がどのように活動するのかを見ていきたいと思います。

 

2.腹筋ローラー中に骨盤傾斜に関わる筋はどのように活動する?

下の画像は、腹筋ローラー中に上で挙げた各筋がどのように働くかを示したものです(少し背景と色が重なってしまい見づらいですがご了承ください...)。

Aで示すように、腹筋ローラーを身体から最も遠ざけている姿勢では、広背筋と股関節屈筋群が引き伸ばされながら収縮し、骨盤を前傾させる方向に力を働かせます。

また、腰椎に直接付着している大腰筋も腰椎を前弯させる方向に力を発揮しています。

 

この様な状況のときに、骨盤の前傾に対抗する筋(腹筋群や大殿筋)の収縮力が弱い場合、腰椎が大きく前弯することで椎間関節に大きなストレスがかかります(A)。

これが、腹筋ローラーで腰椎を痛めやすい理由です。

 

その一方で、Bのように骨盤前傾に対抗する筋の力が十分に高い場合では骨盤の前傾に対抗することができ、腰椎の前弯ストレスは軽減されます。

 

次のセクションでは、腹筋ローラーで腰椎の前弯ストレスを軽減する方法をより具体的に解説していきます。

 

3.腹筋ローラーで腰椎の前弯ストレスを減らすためには

では、腹筋ローラーをするときに、腰椎の前弯ストレスをどのように軽減させればよいのでしょうか?

方法は大きく分けて3つあります。

1つ目は、

腹筋群と大殿筋の収縮を意識しながら行う

です。

前のセクションで説明したように、腹筋群と大殿筋は骨盤を後傾させる筋です。
したがって、腹筋ローラー中にお腹とケツに力を入れることで、骨盤の過度な前傾を軽減することができ、結果として、腰椎の前弯ストレスを軽減させることが出来ます。

 

腹筋ローラー中の腰椎前弯ストレスを軽減する2つ目の方法として、

腹筋にある程度の筋力がついてから腹筋ローラーを行う

です。

そもそもの腹筋群の筋力が弱い人はいくらお腹とケツに意識を向けたとしても骨盤の前傾に対抗することは難しいでしょう。

なのでトレーニング初心者は、腹筋の種目としていきなり腹筋ローラーを選択するのではなく、ある程度腹筋の筋力がついてから行うのが良いでしょう。

 

3つ目の方法として、

膝をついて行う「膝コロ」を選択する

です。

1つ目と2つ目の理由は骨盤前傾に対抗する筋の力を大きくすることに着目してきましたが、3つ目は骨盤前傾に関わる筋の活動を抑える方法をとります。

膝コロでは股関節が屈曲されることで、股関節屈曲筋群が緩み骨盤を前傾させる方向に働く力が減少します。

なので、立ちコロと比較して腰が反りづらくなり、結果として腰にかかるストレスも低くなるでしょう(ただ、膝コロも初心者にとっては難易度がかなり高い種目になるので注意してください)。

 

 

まとめ

今回は、腹筋ローラーで腰が痛くなりやすい理由とその対処法を話しました。

腹筋ローラーで腰のストレスを軽減させる3つの方法は以下の通りです。

  • 腹筋群と大殿筋に力を入れながら行う
  • 腹筋の筋力がついてから腹筋ローラーを選択する
  • 腰に不安がある人は無理に立ちコロを選択せず、膝コロを選択するのがよい

 

腹筋ローラー自体は高い体幹の固定力を必要とするエクササイズのため、もし対象者の筋力レベルが高ければ、腹筋ローラーは良いエクササイズでしょう。

ただ、腰痛を抱えてる人や筋力レベルが低い人であれば、積極的に取り入れるべきエクササイズではないと考えます。

 

今回の記事は以上になります。

ではまた!

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  • この記事を書いた人

中田 開人

理学療法士,CSCS 1996年7月22日生まれ 北海道札幌市出身 アスリートのパフォーマンスを高める専門家(S&Cコーチ)として活動しています。

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