ルーマニアンデッドリフト(以下、RDL)は選手にもよくやらせるメニューの一つで、
久しぶりにやった次の日には、とてつもない筋肉痛がハムストリングスに来ます(笑)
(↓ルーマニアンデッドリフト)
その一方で、RDLは大殿筋のトレーニングでもあると書かれることがありますが、
僕自身がやった感覚として、RDLでケツに刺激が入っていると感じることは少ない気がします。
ただこれはなんとなく感じていただけで、それがどうしてなのかはあまり考えたことはありませんでした。
そんなときにある解剖の本を読んでいた時に、
「やっぱりRDLはハムストリングスメインの種目かもしれない!」
と納得するような文章が書かれてあったので、今回のブログのテーマにすることにしました。
根拠は大きく分けて2つあります。
大殿筋とハムストリングスの起始停止
まず最初に大殿筋とハムストリングスの起始と停止について簡単に説明します。
大殿筋の起始と停止は以下の通りです。
起始:腸骨後面,仙骨,尾骨,仙結節靭帯など
停止:腸脛靭帯,殿筋粗面
↓横から見た図
(ビジブル・ボディの提供による画像)
一方でハムストリングスの起始停止は以下の通りです。
起始:坐骨結節の後方
停止:脛骨,腓骨
(ビジブル・ボディの提供による画像)
重要となるのは以下の2点です。
- 大殿筋の起始が腸骨後面で、ハムストリングスの起始が坐骨結節の後方であること
- ハムストリングスが2関節筋であること
以上の解剖学的な知識を基に、RDLがハムストリングスメインの種目であると思う根拠を話していきます。
根拠1:RDL中にハムの股関節伸展モーメントアームが増加する
根拠1つ目には力学的な背景が関わっています。
RDLでは大腿骨に対して骨盤の前傾運動が行われますが、
それに伴い、大殿筋とハムストリングスの股関節伸展モーメントアームは以下のように変化します。
(※モーメントアーム:関節の回転軸と力の方向の最短距離)
骨盤が前傾するにつれてハムストリングスが付着している坐骨結節が後方に回転し、
ハムストリングスの股関節伸展モーメントアームは長くなります。
これにより、ハムストリングスによる股関節伸展トルクが、RDL中に起こる体幹の前傾姿勢を支えるという点で最適化されます。
その一方で、大殿筋の股関節伸展モーメントアームは骨盤前傾に伴い短くなり、
RDLで体幹の前傾姿勢を支えるという点では不利になります。
つまり、RDLのような体幹が前傾した姿勢を保持するためには、大殿筋を使って支えるよりもハムストリングスを使った方が効率的ということになります!
先行研究の中にも,立位時の股関節の深い屈曲姿勢では大きなハムストリングスの筋活動が生じる一方で、大殿筋は比較的、非活動のままであるという報告もあります¹。
もちろん、RDLのように高負荷トレーニングとなれば、多少なりとも大殿筋の関与は大きくなるとも思います。ただ、その貢献度はハムストリングスに比べたらかなり低いと考えてます。
おそらくこの様な力学的な背景もあって、
RDLのような立位での深い股関節の屈曲姿勢では、ハムストリングスが優先的に動員されているんだと今現在は考えています。
根拠2:ハムが伸張されて他動的張力が増加する
RDLがハムストリングメインの種目だと思う根拠2つ目として、
ハムストリングスの他動的張力がRDLの下降局面で大きく増加するからだと考えてます。
他動的張力とは、組織が引き伸ばされたときに自分の意志とは関係なしに発生する張力のことで、
例えていうなら、「ゴムを引き伸ばしたときに元に戻ろうとする力」のようなものです。
重要なことに、この他動的張力はハムストリングスのような多関節筋で大きくなるといわれています²。
なので、RDLの下降局面では単関節筋である大殿筋よりも、2関節筋であるハムストリングスで他動的張力が高まりやすく、バネのような抵抗が生じやすいと考えられます。
したがって、RDLはハムストリングスの弾性要素を高めるトレーニングとして有効なトレーニングかもしれません。
まとめ
今回はRDLがハムストリングスメインの種目であると考える根拠について話してきました。
その根拠については以下の通りです。
- RDL中にハムストリングスの股関節伸展モーメントアームが長くなり、優先的に動員されている。
- ハムストリングスが2関節筋であることで、他動的張力が高まりやすい。
なので、今現在はRDLをハムストリングスの強化という目的で導入しており、
大殿筋の強化は他の種目で補うようにしています。
今回話したことやそれ以外について何か意見があれば、コメントお願いします!
参考文献
- Fischer FJ and Houtz SJ. (1968). Evaluation of the function of the gluteus maximus muscle. An electromyographic study. Am J Phys Med, 47(4), 182-191.
- Donald NA 著, 嶋田智明, 有馬慶美 監訳. (2016). カラー版 筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版, 医歯薬出版株式会社, p61.