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36|Reactive strength index modified(RSI mod)ってどんな指標?

2024年2月15日

本記事では、Reactive strength index modified(RSImod)について解説していきたいと思います。

 

「ん? RSI modってなんのこと?」

「RSIなら知ってるけど”RSImod”ってなに?」

 

おそらく多くの方は、RSIに関してはどんな指標かを理解できているかもしれませんが、

”RSImod”の指標についてはまだあまり理解できていない、あるいは聞いたことすらないという方が多いのではないでしょうか?

 

今回はRSImodの定義から始まり、トレーニング現場にどのように活かしていけば良いのか?測定するときに注意すべき点は?というところまで幅広く解説していこうと思います!

是非最後までお付き合い下さい🙋‍♂️

 

1.まずはRSIについて復習しよう

RSImodについて解説する前に、まずは比較的よく知られているRSIについて定義等を復習していきたいと思います。

 

RSIは日本語では”反応性筋力”と表され、主にドロップジャンプ(Drop jump; DJ)を用いて測定される指標になります。

計算式は

『RSI=跳躍高/接地時間』

となります。

この計算式からも分かる通り、反応性筋力は

"どれだけ短い接地時間の中でより高く跳ぶことができるか"

を表しています。

 

例えば、スプリントや方向転換などのSSC動作では、地面に足が接している時間というのは非常に限られており、

この限られた時間内でより高い力を伝えることがパフォーマンスを高める上で非常に重要となります。

 

この観点から考えると、例えばDJで仮に高く跳ぶことが出来ていたとしても、

同時に地面に接地している時間も長ければ、実際のスポーツ現場との関連性という面では少し薄れてしまうかもしれません。

 

一方で、RSIでは跳躍高を接地時間で割ることでたとえ短い接地時間であったとしても高い力を地面に加える能力があるのかどうか?

といったよりスポーツ場面に近い観点をRSIを測定することで理解することができます。

 

実際に、Javis P et al. (2021)はメタ分析を用いてRSIとスプリントパフォーマンスとの間に中程度の関連性があり、方向転換能力とは大きな関連性があることを報告しています1

 

ポイント

  • RSIを測定することで、SSC動作の中で短い接地時間であったとしても高い力を地面に加える能力があるのか否かを評価できる。
  • 実際にRSIはスポーツ場面のあらゆるSSCパフォーマンスと関連があることが明らかとなっている。

 

2.RSImodってなんのこと?

では以上のRSIに関する知識をもとに、本記事の本題であるRSImodについて解説していきます。

 

RSIがDJを用いて測定する一方で、RSImodは主にカウンタームーブメントジャンプ(Countermovement jump; CMJ)を用いて測定されることが多いです。

計算方法は

『RSImod=跳躍高/離地までの動作時間』

となります。

RSIと異なる点としては、跳躍高を地面への接地時間ではなく、動作開始から離地までの時間で除しているところです。

 

CMJの跳躍高は多くのスポーツ現場でもよく取り入れられている評価項目の一つになりますが、

跳躍高はあくまでどれだけ高く跳べるかを表しているだけであり、実際にその選手がどのような戦略でCMJを実施しているのかどうかまでの洞察は得ることができません。

一方で、RSI同様こちらも時間の指標で跳躍高を割ることで、よりスポーツ現場に則した”より短い動作時間内で高い力を伝えることができるのかどうか?”といった観点を理解することができます。

 

ただ、その一方で

「RSIと計算式が似ていてRSImodを測定することのメリットがよくわからない...」

このような感想を持った方もいるのではないでしょうか?

 

ではここからは、RSImodに特異的な特徴(RSIとは異なる点)を解説していきます。

 

A.低速SSC能力を反映している?

繰り返しになりますが、DJはある一定のボックスから落下し、できるだけ短い接地時間で瞬間的に跳躍するという特徴があるため、

DJで測定されるRSIはSSCの中でも比較的速いSSCで測定される指標と考えられます。

 

一方でRSImodが測定されるCMJではあらかじめ地面に足が接地した状態からスタートするため、反動を開始してから離地するまでの時間は比較的長くなります。

そのため、RSImodは比較的遅いSSCで測定される指標といえるでしょう。

実際にEbben and Petushek. (2010)は、DJの地面接地時間は約200msである一方で、CMJの動作時間は約558msであることを報告しています2

また、伸張性局面と短縮性局面をそれぞれ分けて調査した場合においても、CMJはDJよりもいずれの局面においても動作時間が長いことが明らかとなっています。

 

したがって、RSImodでは地面接地時間が比較的長いパフォーマンス(スプリントの加速局面やその場での高い跳躍)などをより反映している指標と言えるかもしれません。

 

B.RSImodで表される反応性筋力は股関節による貢献度も大きい?

また、RSIが測定されるDJは基本的には足関節と膝関節を用いて実施される種目になります。

その一方で、RSImodが測定されるCMJはDJよりも股関節の貢献度がより大きくなると考えられています。

例えば、Marshall and Moran. (2013)3は、CMJと反動の大きいDJと反動の小さいDJの短縮性局面に下肢三関節で発揮されるピークパワーを測定し、

CMJはDJよりも股関節による発揮パワーが大きく、DJはCMJよりも足関節と膝関節の発揮パワーが大きいことを明らかにしました。

以上より、CMJにより測定されるRSImodはDJで測定されるRSIよりも股関節による貢献度が大きい可能性があります。

したがって、足関節周りだけでなく、股関節による反応性筋力を調査する目的でもRSImodを選択することは理にかなっているかもしれません。

 

C.ウエイトリフティング種目やジャンプSQ等のエクササイズの効果をより反映する可能性がある?

最後に僕自身、RSImodを測定することの利点として”ウエイトリフティング種目やジャンプSQ等のエクササイズの効果をより反映する可能性がある”と考えています。

 

どういうことかと言いますと、

DJで測定されるRSIはボックスからの着地を伴って測定される種目であり、一瞬でかかる衝撃に対して下肢三関節を一瞬で固めるいわゆるスティッフネスが要求されます。

したがって、RSIはそのアスリートが持つ”バネ機能”を良く反映している指標と考えられ、筋単独で考えるよりも筋腱複合体全体の機能を表すイメージがあります。

そしてRSIをトレーニングする場合にもいわゆるDJやRepeated ankle hopのような高速SSCを用いたトレーニングが有効である可能性が高いと言えるでしょう。

 

一方で、多くのパワートレーニングとして採用されるようなウエイトリフティング種目(クリーンやスナッチ)やジャンプSQはその選手のバネ機能を高めるトレーニングというよりも、

筋そのものの発揮パワーを高める視点が大部分を占めており、

つまりこれらで得られるトレーニング効果をRSIで測るのは少し難しいかもしれません(関連性が低い?)。

以上を踏まえると、CMJで測定されるRSImodは、もちろん筋腱複合体の要素が含まれているとはいえ、

RSIよりもより筋そのもののパワー特性を反映している可能性があると考えています。

 

したがって、ウエイトリフティング種目やジャンプSQトレーニングによるSSC機能の変化を評価する際には、RSImodを評価することが有効であると個人的に考えています。

 

(あくまで仮説なので解釈が間違っているかもしれません。ぜひみなさんのご意見もお聞かせください)

3.RSImodが高いアスリートはどういった特徴があるのか?

では次に、RSImodが高いアスリートはどのような特徴を持っているのか?について考察していきたいと思います。

McMahon JJ et al. (2022)は、イングランドのラグビースーパーリーグ(SL)に所属する30名の選手とラグビーチャンピオンシップ(RLC)に所属する30名の選手間のRSImod等の指標を測定しました(競技レベル:SL>RLC)4

 

結果としては、SLはRLCの選手よりもRSImodが高く、離地までの時間が短いことがわかりました。

一方で、跳躍高に関しては群間で有意差はなく、ここで観察されたRSImodの差は主に離地までの時間の差によって生み出されたものであることが示されました。

また彼らは今回RSImodに生じた群間差に影響をもたらした離地までの時間と関連のある指標に関して、

沈み込みの深さが浅いことと推進変位が小さいことが関連していることを明らかにしました。

(沈み込みが浅いとその後に推進局面の押し返す距離が短くなるので、しゃがみ込みが浅いことと推進変位が小さいことは密接に関係している)

McMahon JJ et al. (2022)の研究からわかったこと💡

✔️RSImodが高いアスリートは浅いしゃがみ込みでも高い力積を稼げている可能性がある!

 

またMcMahon JJ et al. (2018)は、競技レベルの異なるアスリートの比較ではなく、同じラグビーリーグに所属する53名の選手をRSImodが高い群(n = 20; High RSImod)と低い群(n = 20; Low RSImod)に分類し、

CMJ中に測定される値の群間比較を行いました5

その結果、High RSImodはLow RSImodよりも”より高い跳躍高”と”より短い離地までの時間”が観察されました。

また彼らは、伸張性局面(ECC局面)と短縮性局面(CON局面)のそれぞれの動作時間と重心変位も計測しており、

ECC局面とCON局面の動作時間はどちらもHigh RSImodがLow RSImodよりも小さく

重心変位に関してはCON局面のみHigh RSImodがLow RSImodよりも小さいことを明らかにしました。

最初の結果で示した通り、High RSImodは動作時間全体が短かったわけですが、

注目すべき点はECC局面の動作時間に関してもHigh RSImod群が小さかった点です。

つまり、RSImodが高い人は沈み込みを素早く実施している可能性があり(ECCの重心変位は差がないため)、

ここで発生した下方向への大きな加速を減速させるためにより高いForceがECC局面で生成されている可能性があります。

そしてECC局面の最後で生成された大きなForceはCON局面に引き継がれ、CON局面での高いForceとVelocityに繋がります(詳細は以下のブログ記事参照👇)。

 

McMahon JJ et al. (2018)の研究からわかったこと💡

✔️RSImodが高いアスリートはしゃがみ込み局面を素早く実施している可能性がある!

 

さらに、Harry JR et al. (2018)はある程度の身体活動を普段から行なっている男性15名にCMJを実施させ、

一定のRSImodのカットオフ値を参考にRSImodが高い群(Good RSI;6名)と低い群(Low RSI;9名)に分類しました6

 

群間の比較を行った結果、

Good RSI群はLow RSI群よりもRSImodと推進局面の力積が有意に高く、抜重局面の時間が短いという結果になりました。

(跳躍高と離地までの時間は群間で有意差はないものの中〜大の効果量あり)

 

この結果の解釈に関してですが、

RSImodが高いアスリートというのは抜重局面の動作が得意で負の速度を大きく高める能力に長けている可能性が考えられます(この研究ではしゃがみ込み深さが群間差がなかったため「速度」=「距離(しゃがみ込み深さ)」÷「時間」ことから予想)。

Harry JR et al. (2018)の研究からわかったこと💡

✔️RSImodが高いアスリートはしゃがみ込み局面の中でも抜重局面を素早く実施している可能性がある!

 

McMahon JJ et al. (2022)とMcMahon JJ et al. (2018)とHarry JR et al. (2018)の3つの研究を総合して僕自身が考えていることを下にまとめてみます。

 

僕の考え

ある程度競技レベルが高いアスリートは、RSImodを高めるために離地までの時間を短くする戦略を取る傾向にある(跳躍高を高くする戦略ではなく)

離地までの時間を短くするためにしゃがみ込みの深さを深くしすぎないような跳躍をしている

ただ、しゃがみ込みが浅いと地面に接している時間が短いので力積を多く稼ぐことができない(→離地までの時間は短くなるが跳躍高が低下してしまう)

そのためしゃがみ込みの抜重速度を速くして高いForceを生成する戦略をとる高い負の速度を食い止める為の高い伸張性筋力は必要

伸張性局面で生成された高いForceは短縮性局面に引き継がれ、高くて素早い跳躍に結びつく

 

解説すると、

RSImodは動作時間が短いと高くなるという特徴があるため、しゃがみ込みの深さを浅くすれば高くなる傾向はありますが、

それと引き換えに地面に力を加える時間というのも減少してしまい、跳躍高の低下に繋がります。

 

ただ、RSImodが高いアスリートというのはそれを補うように素早い抜重局面を行っており、

それによって高いForceをECC局面に生成することで跳躍高の低下を防いでいると考えられます。

もちろんこれを可能にするためには、ECC局面での高い伸張性筋力(特に素早い力発揮(ECC RFD))を兼ね備えていることが前提になります。

 

前回のブログ記事で示した通り、伸張性局面の素早い動作改善にはSSC動作を含むPower Trainingや伸張性トレーニングが特に重要であると考えています。

詳しく知りたい方は前回の記事を是非ご一読ください!

 

4.RSImodはしゃがみ込み角度を規定すると低下する

また、RSImodはしゃがみ込み時の膝の屈曲角度に影響を受けやすいので、測定時には膝屈曲角度に注意して測定した方がいいです。

例えば、Pérez-Castilla A et al.(2020)7は、しゃがみ込み時の膝屈曲角度をあらかじめ規定した様々な角度でRSImodを測定した結果、

浅い角度で実施されたCMJほどRSImodが高いことが示されました。

 

さらに興味深いことに、彼らはあらかじめ規定された膝屈曲角度で跳んだ場合と自分が最も跳びやすい膝屈曲角度で跳んだ場合の2パターンを比較し、

RSImodは自分が最も跳びやすい膝屈曲角度で跳んだ場合の方が有意に高いことを明らかにしました。

つまり、RSImodがしゃがみ込み時の膝屈曲角度の影響を大きく受けることを考えて、あらかじめしゃがみ込み深さを規定してしまうと本来の自分の力を出しきれないことにつながるかもしれません。

 

したがって、もしRSImodを測定する際には、測定毎に膝屈曲角度が大きく変化してしまわないようにあらかじめ指示を加えていた方がいいかもしれません。

 

まとめ

以下本記事のまとめになります。

 

  • RSImodはCMJの「跳躍高」を「動作開始から離地までの時間」で割った指標
  • RSImodは比較的遅いSSC能力を表している可能性
  • RSImodはRSIよりも股関節のSSC機能を評価するのに適しているかも?
  • ウエイトリフティングやジャンプSQのようなパワートレーニング系種目のトレーニング効果を測定するのにはRSIよりもRSImodの方が適しているかも
  • RSImodが高いアスリートは浅いしゃがみ込みで素早い抜重局面を実施している傾向にある
  • RSImodを測定する際にはしゃがみ込み角度が測定毎に大きく変化しないように注意する

 

今回の記事は以上になります。

 

ではまた!!

 

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追伸

 

先日北海道のニセコに行ってスノーボードをしてきました🏂

毎回やるたびに今年はたくさん行こうと意気込むのですが、なかなか今年も数は行けなさそうです😅

 

ウインタースポーツは好きですが、朝が寒すぎるので最近はやはり夏の方が好きかもしれません笑

 

参考文献

  1. Jarvis P, Turner A, Read P, Bishop C. Reactive Strength Index and its Associations with Measures of Physical and Sports Performance: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sports Med. 2022 Feb;52(2):301-330.
  2. Ebben WP, Petushek EJ. Using the reactive strength index modified to evaluate plyometric performance. J Strength Cond Res. 2010 Aug;24(8):1983-7.
  3. Marshall BM, Moran KA. Which drop jump technique is most effective at enhancing countermovement jump ability, "countermovement" drop jump or "bounce" drop jump? J Sports Sci. 2013;31(12):1368-74.
  4. McMahon JJ, Jones PA, Comfort P. Comparison of Countermovement Jump-Derived Reactive Strength Index Modified and Underpinning Force-Time Variables Between Super League and Championship Rugby League Players. J Strength Cond Res. 2022 Jan 1;36(1):226-231.
  5. McMahon JJ, Jones PA, Suchomel TJ, Lake J, Comfort P. Influence of the Reactive Strength Index Modified on Force- and Power-Time Curves. Int J Sports Physiol Perform. 2018 Feb 1;13(2):220-227.
  6. Harry JR, Paquette MR, Schilling BK, Barker LA, James CR, Dufek JS. Kinetic and Electromyographic Subphase Characteristics With Relation to Countermovement Vertical Jump Performance. J Appl Biomech. 2018 Aug 1;34(4):291-297.
  7. Pérez-Castilla A, Weakley J, García-Pinillos F, Rojas FJ, García-Ramos A. Influence of countermovement depth on the countermovement jump-derived reactive strength index modified. Eur J Sport Sci. 2021 Dec;21(12):1606-1616.
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  • この記事を書いた人

中田 開人

PT,CSCS,MS(スポーツ科学) 早稲田大学大学院博士後期課程 1996年7月22日生まれ 北海道札幌市出身 アスリートのパフォーマンスを高める専門家(S&Cコーチ)として活動しています。

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