今回の記事では、カウンタームーブメントジャンプ(Countermovement jump;CMJ)の力-時間曲線を改めてしっかり理解しよう!というテーマでブログ記事を書いていこうと思います。
CMJってよくアスリートのパフォーマンステストとして用いられていると思うんですけど、それから得られる力-時間曲線って何を意味しているか深く理解している方はあまりいないんじゃないでしょうか?
今回は以下の論文を参考に、CMJから得られる各局面が意味していることを改めて解説し、
皆さんがこれからアスリートのパフォーマンステストでCMJを用いたり、CMJ関連の論文を今後読む際により深く解釈できるような基本知識を解説していきたいと思います!
(↓参考論文↓)
1.CMJの力-時間曲線の概要
まず初めにCMJをフォースプレート上で実施した際に一体どのような波形が現れるのか?
実際には以下のような波形が出るかと思います。
まず初めに抜重局面(Unweighting Phase)、その後に減速局面(Braking Phase)そして最後に推進局面(Propulsion Phase)が続きます。
(※実際にはWeighting Phase→抜重局面→減速局面→推進局面→Flight Phase→Landing Phaseと6つの局面で構成されますが、今回の記事では上記の3つの局面に絞って解説していきます)
ちなみに、グラフの点線で描かれた波形は重心の垂直方向の速度を表しています。スタート位置から下側に向かっている場合(つまり、抜重局面の終わりまで)は下方向に速度を上げており、上方向に向かっている場合(つまり、抜重局面以降)には上方向に速度を上げていることを意味しています。
では、次のセクションから実際に各局面が意味していることを解説していきます。
2.抜重局面(Unweighting Phase)
最初の抜重局面に関しては、おそらく多くの人が最もイメージしずらい局面なのではないかな思います。
「え、しゃがみ込みし始めてすぐ減速局面が始まるんじゃないの?」
と思っていた方も多いのではないのでしょうか?
実際には、CMJの最初の局面では実施者はしゃがみ込みをしていながらも、各関節の伸展筋は弛緩しているため、元々のスタート時のForceよりも小さい値が計測されます。
では、この抜重局面があることはCMJを高く跳ぶ上で一体どのようなメリットがあるのでしょうか?
この観点に関しては、抜重局面の区間定義を見ると理解できるかもしれません。
抜重局面は
「体重が設定されたForceの閾値よりも小さくなった瞬間〜重心の負の速度がピークになるまで」
の区間で定義されます。
重要なのは抜重局面の終わりが重心の負の速度がピークになる瞬間ということです。
つまり、抜重局面では重心の下方向への速度が徐々に増しているのです。しかしながら当たり前ですが、実施者はその後上方向に向かって跳ぶ局面が待ち受けているため、徐々に減速する必要があるかと思います。
したがって、抜重局面で高い速度が生成された場合、引き続く減速局面でも高い力発揮が要求されることになります。
後々説明しますが、最後の推進局面には減速局面での力発揮の大きさや速度が大きく関わっているため、高く跳躍するためには続く減速局面にて大きな力発揮をすることが重要です。
それを踏まえると、抜重局面は最終的に推進局面で高く跳ぶために、減速局面で高い力発揮を生成するための準備的局面とも捉えられます。
まとめると、CMJにおける抜重局面の役割の一つとして、
「減速局面で高い力発揮を生み出すために、下方向へ高い速度を生成する」(※詳細は次の減速局面のセクションにて解説)
ことが挙げられるかと思います。
3.減速局面(Braking Phase)
続いて、減速局面について解説していきます。
減速局面の区間定義は
「重心の負の速度がピークになる瞬間〜重心の速度がゼロになるまで」
です。
減速局面では先ほどの抜重局面で生成された速度を減速させることが要求されます。
先ほどの抜重局面の話とも部分的に重なりますが、重要な点としては減速局面でどのような波形を示すかは事前の抜重局面でどれだけ速度が増しているかに大きく影響を受けることが挙げられます。
例えば、減速局面で示される力積(時間×力)は抜重局面での力積と等しいという特徴があります。
これを説明する上で前提となる事前知識として、
「物体のもつ運動量(質量×速度)の変化は加えられた力積の変化に等しい(Δ運動量[質量×速度]=Δ力積[時間×力])」
という内容を理解しておく必要があります。
まず先ほども書いた通り、抜重局面では重心の負の方向への速度が増しています。
そうすると、運動量の変化が生じることとなります(運動量の構成要素の一つが速度であるため※実施者の質量は変化しないため基本的には速度の影響のみを受けることとなる)。
そしてΔ運動量[質量×速度]=Δ力積[時間×力]の式を踏まえると、抜重局面で生じている運動量を食い止める(下方向の速度をゼロにする)ためにはそれと”同等の”力積を減速局面で加える必要があります。
これが減速局面の役割であり、抜重局面で高い運動量が生成されているほど、減速局面では高い力積を生成しなくてはいけないのです。
そしてここで生成された力積が続く推進局面に大きなメリットもたらすことになります。
※ただ、この減速局面で示される力積が短時間に大きな力を加える波形から構成されるのか、あるいは長時間に渡って小さな力を生成するかは実施者のジャンプ戦略によって異なります。
4.推進局面(Propulsion Phase)
最後に推進局面について解説します。
推進局面の区間定義は
「重心の速度がゼロになる瞬間〜離陸(Take off)まで」
です。
この局面で重要となるのが、
「推進局面開始時のForceは減速局面終了時のForceの影響を大きく受ける」
という点です。
高い跳躍を遂行させる上で、推進局面で大きな力積を稼ぐことは非常に重要となりますが、そのためには事前の減速局面から既に高いForceを生成しておくことが求められます。
なので、もちろん推進局面で高い力発揮を行う能力(≒短縮性筋機能)も重要ですが、
いわゆる先立つ伸張性局面(減速局面)から効率良くかつ効果的に短縮性局面(推進局面)に力を伝達するようなSSC機能もCMJでは求められます。
つまり、高く跳べるかどうかはその前(減速局面、さらには抜重局面)から既にある程度決まっているのでは?とも考えられますね
まとめ
簡単ですが、CMJの力-時間曲線について整理してみました。
以下本記事のまとめです。
- 抜重局面では重心の負の速度を生成することが要求されている
- 減速局面では抜重局面で生じた運動量(≒速度)を食い止めるために高い力積を生成することが求められる
- 推進局面では減速局面で生成されたForceの影響を大きく受ける
今回の記事では
「どうしてこのような曲線になるのか?」といった点にフォーカスして書いてあるので、
「各局面がどういった能力を反映しているのか?」といった点については詳しく書いてはありません。
こちらに関しては今後また記事にできればと思います。
今回の記事は以上となります。
ではまた!!
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追伸
北海道の冬が寒すぎます笑
最近ついにニトリのNウォームシリーズで一番暖かい敷パッドと窓に貼る断熱パッドを買いました。
少しでも争いたい気持ちで買いました笑
やはり冬よりも夏派です。
でもスノボやスキーが楽しめるのは個人的な冬の強みです🏂⛷️